私が子どもの頃に人気だったテレビドラマに「水戸黄門」があります。「このお方をどなたと心得る、先の副将軍、水戸光圀公にあらせられるぞ」というお決まりの台詞のあとには必ず威張っていた悪代官などが平伏すという基本的に終わり方はワンパターンですが、スカッと感が高いので老若男女問わず人気でした。


光圀公が威張ってもおらず、「こ隠居さん」として町人の格好をしていますから、悪代官たちは「ご隠居さん=町人」という先入観を持っています。


悪代官を演じる役者さんたちは「まさか先の副将軍がこんなところに…」と、先入観が打ち砕かれた驚きと動揺を視聴者が喜ぶように大げさに、しかし上手く演じていました。


私たちは誰しも先入観を持っています。そしてその先入観はドラマと違ってほとんどの場合打ち砕かれる、ということはなく人生が終わります。



「世界は自分の頭の中でつくられている」というのはある意味正しいのかもしれません。脳がどんな誤作動を起こすのかはわかりませんが、私たちは事実とは真逆のことを疑わずに信じていることがあります。


私もつい最近までまったく真逆のことを数年間信じていたことに気づかされ、自分がそう思い込んだ経緯がまったく思い出せず、愕然としました。


先入観や思い込みは理由がわかりやすい場合とそうでない場合があります。


昔の同僚に「裕美」 という名前の男性がいました。 かなり厳つい感じのオジサンですが、名前から若くて綺麗な女性が想像されるのか、病院や区役所などで名前を呼ばれていくと必ず書類を二度見されるそうです。銀行などでも不必要に身分証明書の提示を求められることも多かったそうです。


「ひろみ」という名前は有名男性芸能人にも複数いますが、それでも漢字で「裕美」と書かれると多くのひとは女性だという先入観をもつのでしょう。


バングラデシュで会った日本人の方は、ミャンマーで長距離バスを待つ間に喋っていた同じ日本人にパソコンを盗まれたそうです。 ちょっとトイレに行くので荷物を見ていて欲しいと頼んで戻ってくると、その日本人がパソコンと一緒に消えていたそうです。


「海外だからとずっとかなり用心していたのに、何故か日本人は大丈夫という先入観があったんですよね」とおっしゃっていました。 


これは自分も海外にいるとすごく理解できます。


人間の1日の思考回数は1万回だと言われているそうです。そのうちの何回が先入観や思い込みに繋がるのかはわかりませんが、それだけ思考を繰り返せば脳が誤作動を起こすのも当然です。



先入観や思い込みに加え、私たちは毎日接する情報に少しずつ洗脳もされています。現代人が1日に接する情報は江戸時代のひとの一生分に相当する、という説もあります。


脳のスペックに多少の個人差はあれ、江戸時代のひとの一生分の情報を1日に処理している私たち現代人の脳は実はオーバーヒート気味なのかもしれません。


いずれにしても、私たちが思い込みや先入観、そして日々の情報による洗脳から解放されたら世界はまったく違って見えるのかもしれません。


アメリカの笑い話にローストビーフの端の話があります。

小さな女の子が母親がローストビーフを焼くときにいつも端を切ってオーブンに入れるので、理由を尋ねると「ローストビーフは端を切って焼くものなの。お母さんがいつもそうしていたから」と言うので、お祖母さんに聞いてみると同じ答えが返ってきます。 それを聞いて曽祖母さんに聞いてみると意外な答えが返ってきました。

「昔は小さなオーブンしかなくて端を切り落とさないと入らなかったからね」


私たちが頑なに信じていることは実は先入観によるものだったり、単なる思い込みという可能性もあります。


体の健康のために健康診断を受けるように、心や脳の健康のためには時々は思考のチェックというのも必要なのかもしれません。


水戸黄門に出てくる悪代官たちが同じように感じるかどうかはわかりませんが、実害のない形で先入観や思い込みが打ち砕かれると何となく自分の世界が広がったように感じます。


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 今日のドイツ語 ( 670 ) 


Voruteil (ホーォタイル)

これは英語の「prejudice」で 「先入観 」の意味です。prejudiceは偏見という意味合いがあるので、日本語の先入観とはちょっとニュアンスが違ってくる場合もありますが… 。 「先入観にとらわれている」という意味では「I can't think out of my box」という表現がよく使われます。


 
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