以前知り合いになった若いお嬢さんは、学生時代に結婚を約束した恋人を癌で亡くされたそうです。

死別後は声が出なくなり、普通に声をだしてひとと話ができるまでかなり時間がかかったそうです。


彼は突然死ではなく、末期癌で余命宣告を受けてしばらくしてから亡くなったそうです。

結婚を約束していたとはいえ、入籍前ですから病室に自由に出入りすることもなかなかできず、また治療方針なども彼女の意見が通ることはなく、息を引き取る瞬間にもそばにいることはできなかったそうです。


死別後、声が出なくなるほどのショックを受けた彼女に周りのひとたちがかけた言葉は、「でも戸籍に傷がつかなくて良かったわね」だったそうです。


「死別の二次被害」というものがあるなら、まさにこういう言葉をかけられることなのだろうと思います。


日本の文化や慣習を考えれば、そういう言葉をかけるひとがいることも理解はできます。 結婚を「愛情」という視点ではなく、「市場」という視点で捉えるならば「若くて初婚の女性」は「若くして寡婦となった女性」よりも需要が高い、要はそれだけ価値が高いと考えるひとが一定数いるということです。


「戸籍に傷がつかなくて良かったわね」というのは彼女に対してだけでなく、配偶者を喪ったすべてのひとに対して失礼な言葉です。


配偶者と死別することは「戸籍上の傷」ではありません。


何より、未入籍の恋人や婚約者を喪ったひとが一番強く思うことは「せめて籍が入っていれば」ということです。 一番大切なひとを喪って「愛情」を確認したくてもできない、せめて何か「証」が欲しいという気持ちあるはずです。


そしてその気持ちは死別から日が経てば経つほど強くなります。 特に最初の数年はその証としての「紙」がないことの苦しさで押し潰されそうになるはずです。


「死別」という経験はとても個人的なことで、その辛さは想像だけではなかなか理解ができません。例え同じ経験をしたとしても辛さというのは違います。


証としての「紙」があれば、その「紙」ゆえに苦しむことや辛さも増えます。 なければないことに苦しみます。


どちらがいいのかは正直わかりません。


だからこそ「傷」という言葉ではなく、「結婚前で良かったわね」という言葉であっても愛するひとと死別をして苦しみもがいているひとにはかけるべきではないと思います。



彼女の場合は大学卒業前だったので入籍していませんでしたが、社会人となって恋人を喪うと、「何で今まで籍を入れなかったの?」というひともいます。


はっきり言えばそれも大きなお世話ですし、悲嘆で疲弊している心に鞭を打ってまでそんな質問に答える必要はありません。


死別後の心はガラス細工にヒビが入り、すこし揺らしただけでも崩れて粉々になってしまうほど脆くなっています。


そのことを周りのひとがどれだけ理解してくれるか、それが脆くなったガラス細工を粉々にせずに修復するための大きな鍵になるような気がします。





 今日のドイツ語 ( 664 ) 

Krankenhaus (クランケンハウス)

これは英語の「hospital」で 「 病院」の意味です。
 
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